「兄者はオレの───……
ヒーローだから!」
僕の弟のスフェインは、書店の店主から貰った古い絵本がお気に入りだ
そして、あろうことか、僕を”兄者”と呼ぶようになり、”ヒーロー”だと、言った
この絵本に登場する大魔術師”兄者”と、僕が似ていると笑うのだ
「カッコイイよなぁ!!悪いヤツらなんて、みーんな倒しちまってさ!」
”兄者”は勇敢に戦う強い魔術師で、あらゆる人々に必要とされている
それに比べて僕は、身体が弱くて、周りからあまり必要とされない
似ているところなんて、ないのだ
「……僕は、強くないぞ」
そう、伝えると、スフェインは一瞬驚いたような顔をして、またにっこりと笑った
「でもよ、兄ちゃんはいっつもオレを守ってくれるだろ?
この絵本の”兄者”も、国のみんなを悪いヤツらから守ってる。
それに、兄ちゃんも兄者も……、すっげぇやさしいから」
そうだ
僕たち兄弟は優しさに飢えていた
親から見放された子供にとって、世間の風当たりは酷く冷たい
だからせめて、
”兄”であり、”兄者”である”私”が、
たったひとりの家族である、お前が、幸せに生きていけるように
強く、ならなくては
強く、ならなくては───────……